世界は急速に変化している。そのなかで、日本との絆を共有している私達「日系」は、そもそもどういう時代に生きているのかを理解するのは重要なことだと思う。私にとって、鍵となる言葉は「多極化」する世界に生きているということだ。つまり、世界の全ての地域で重要な役割を果たす国が出現しているということだ。
わずか10年前までは、アメリカが、競争相手のない世界の唯一の超大国だと思うことが出来た。それを、「一極体制」と呼ぶ者もいた。さらに、20年以上もまえは、アメリカとソ連が世界の主導権を争っていた「二極化」の時代、つまり冷戦に生きていた。
最近の10年間の変化は、イメージよりも本当に大胆だったと思う。例えば、2000年に世界で最も豊かな国(GDPベース)の上位10ヶ国を挙げると、順番に:アメリカ、日本、ドイツ、イギリス、フランス、中国、イタリア、カナダ、ブラジルとメキシコだった。しかし、2010年には状況が完全に変わっていた。中国は日本、ドイツ、イギリス、フランスを抜いて世界2位になった。ブラジルも、イタリアとカナダを抜いたのだ。そして、インドもカナダを抜いて上位10カ国に加わった。つまり、新たな「多極化」の世界では、アメリカ、ヨーロッパと日本が長年に渡って享受した経済的地位は必ずしも保証されていなく、重要な役割を果たしたい国が徐々に増えているのだ。メキシコ国立自治大学(UNAM)のアルフレド・ハリフェ・ラメ教授は「六極化」の世界だと言っており、その「極」は、アメリカ、ヨーロッパ、中国、ブラジル、インド、ロシアとなる。
では、果たして、日々のニュースではこの新たな「多極化」の時代が反映されているのだろうか?私は正直、そうは思わない。なぜかと言えば、私たちが受け取るニュースは多くの場合、アメリカやヨーロッパの通信社によるものだ。したがって、他の「極」の視点をきちんと知らないことになる。さらに、ニュースの語り口が未だに「一極体制」、そしてそれより前の冷戦の時代の「二極化」の視点にたっている。中国とロシアは常に「悪役」とされているのが良い例だ。
「日系」の友人のみなさんに提案したいのは、今の時代の課題とチャンスを理解するために、「多極化」の視点から世界を見つめてみようということだ。今後、様々な国に住む私達「日系」がいろいろ考えて、意見交換をする価値があるテーマだと思う。
 

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